登場人物
竹園祐二様クライアント
株式会社アルトル代表取締役社長。会の目的と背景のお話、新しい企業理念・ビジョン・バリューの共有を担当。
古谷野支援者(本人)
会の進行を担当。現状データ、予算戦略とシミュレーター、役員の役割、ワーク(双葉食堂)を説明した外部パートナー。
片倉様役員候補
認識共有会に参加。数字の受け止め、役員報酬のご提案、裏理念のご提案、ご自身の将来像のお話をいただいた。
合意・確認できたこと
- 役員報酬の金額は、この場では決めない。仮案のパターンを一緒に見て、認識をそろえることを目的にした。数字は事実として見るもので、誰かを評価するものではない、という前提を確認した。
- 現状の数字は、片倉様のご感覚と大きくは合っていた。決める力(成約)の面では、お二人の実績に大きな差はない、という見方も出た。難しいのは集客の部分で、ここが今後のデータ整備の重点になる。
- 予算戦略は、3人で一緒に詰めていく。固定費の抑え方、フィー率、取る件数、集客、単価の見直しなどを、現実とぶつけながら決める。
- 役員報酬の設計は、固定費を抑える方向で一緒に考える。片倉様から「500万円が貯まるまで、自分の役員報酬はなくてもよい。成果に応じたフィーで、固定費を抑えたい」とのご提案があった。竹園様は、フィーを抑えて会社に資金を残し、免許取得に進むなら、将来の目安(免許取得後のスタート額など)を決めたいと応じた。
- 責任と権限の設計を、明確にする。各自がどこまでの権限を持ち、どこまで責任を取るのかを、あらかじめ決めておく。意見が割れたときに最終的に決める人も、決めておく。
- 役員の間で持つ「裏理念」を、言語化する。表の理念やバリューとは別に、現実の厳しさを役員同士で共有し、採用や組織を守る判断の軸にする。(片倉様のご提案を、竹園様・古谷野が受け止めた)
- お互いの良い点・改善してほしい点を、定例で言葉にする。認識のずれを小さいうちに修正するため、定例の中で、リスペクトしている点と直してほしい点をフィードバックし合う。
検討中(決定ではありません)。
①役員報酬の形(固定報酬か、成果に応じたフィーか)と、免許取得後の報酬の目安。
②報酬の受け取り方の工夫(社宅の活用など):税理士に確認。
③将来の分社化・グループ化の可能性:クリエイティブ領域やスクールを切り出す案が出た。
④役員契約の事例・退任時の取り決めの考え方。
タスク・宿題・ネクストアクション
竹園様 側
| タスク | 内容 | 期限 |
| 税理士への確認 | 報酬の受け取り方(社宅の活用など)、役員報酬の水準、ナンバー1・ナンバー2の契約形態の事例、退任・売却時の考え方を、税理士に確認する。(法人化までにやること・税理士への確認事項は、のちほど一覧にまとめる予定) | 近日 |
| 報酬の目安の整理 | フィーを抑えて免許取得に進む場合の、将来の報酬の目安(免許取得後のスタート額など)を考え、片倉様と相談できる状態にする。 | 次回の予算戦略の会まで |
古谷野 側
| タスク | 内容 | 期限 |
| 議事録の送付 | 本議事録をお送りする。 | 近日 |
グループ(竹園様・片倉様・古谷野)
| タスク | 内容 | 期限 |
| 予算戦略を3人で詰める | 固定費の抑え方、フィー率、取る件数、集客、単価の見直しなど、現実とぶつけて戦略を決める。 | 次回以降(日程調整) |
| 将来の報酬の目安を決める | 免許取得後のスタート額、いくらまで上げられるか、などを話し合って決める。 | 次回以降 |
| ワークの続き | タイムアップで行えなかった部分(上下関係の正体、もう一つの崩壊パターン、代表・役員それぞれの宣言と見直し)を行う。 | 次回以降 |
| 裏理念の言語化 | 採用の基準や、組織を守る判断の軸になる「裏の行動指針」を、役員で言葉にする。 | 次回以降 |
竹園様・片倉様(古谷野が支援)
| タスク | 内容 | 期限 |
| 役割分担と最終決定権の明文化 | 部門ごとの決定責任者、意見が割れたときの最終判断者を決めて、文章にする。 | 次回以降 |
| 定例でのフィードバック | お互いにリスペクトしている点と、直してほしい点を言葉にして伝え合う。 | 定例の中で |
会の進め方と前提
10月16日(金)20時から、竹園様のパソコンの録音を使って約2時間15分で行った会です。冒頭の確認事項を残します。
古谷野の立場。第三者として入り、竹園様の会社からの依頼を受けて、事業支援として分析を行っている。キャッシュ(手元に残る現金)と損益(月ごとの成績表で、損益分岐点も含む)の違いを、お互いに確認した。
本日のゴール。
①認識のすり合わせと、ここまでの実績の報告
②現状の把握(誰がどのくらい稼いでいるか)
③15か月で自己資本500万円を作るために必要な売上と役員報酬の確認
④役員に求められる役割の確認。
進め方。報酬額は今決めるのではなく、いくつかの仮案を一緒に見る。一方的な報告にならないよう、気になることはその場で質問してもらい、お二人で認識を揃えていくのが望ましい、と確認した。資料は社外秘のため、外に出さない。
竹園様より(会の目的)。法人化にあたって、体制を変えること自体が目的ではなく、同じ方向を向いて一緒にやっていきたい、という思いで開いた。片倉様、古谷野、永井様など、他のメンバーにも、順に同じ話をしていくつもり。
進行について。予定の120分を超え、約2時間15分で、ワーク(双葉食堂)まで行った。会は、レンタルスペースの利用を延長して行い、締めの話の途中で録音が終了した。
現状データの共有(2026年1〜6月)
損益は、実績が確定している1〜6月を基準にした。担当別の件数・取り分は、7〜9月の実績を含む(各事業・収支シート 人材紹介 9/22版・賃貸 10/6版)。
売上(1〜6月)
134.5万円
月平均 約22.4万円
経常利益(1〜6月)
41.5万円
売上比 30.8%・月平均 約6.9万円
コスト構造。人材サービスのため仕入(原価)はなく、売上総利益は売上と同額。そこから外注費や共通費を引いて、経常利益が約41万円(売上比30.8%)。一般に、売上に対して利益が10〜20%残れば良いとされる中では高い水準だが、月の売上が約22万円と小さいため、このままでは法人化後の運営が成り立たない、という認識を共有した。
| 事業 | 売上(円) | 外注費(円) | 営業利益1(円) |
|---|
| 人材委託 | 370,556 | 40,000 | 330,556 |
| 人材紹介 | 413,200 | 77,940 | 335,260 |
| 賃貸仲介 | 496,932 | 202,130 | 294,802 |
| 制作 | 64,471 | 161,865 | △97,394 |
| 研修 | 0 | 4,000 | △4,000 |
| 合計 | 1,345,159 | 485,935 | 859,224 |
制作の赤字について。制作は、広告や面接で話せる作品など、先行投資としての制作物にかけた費用が出ている。制作をやりたい、という事業の目的に沿った投資で、一定の費用をかけている部分。
月ごとの動き。1〜3月は賃貸に支えられて黒字を保ち、賃貸の案件が減ったところで制作への投資により一度赤字になった。4〜6月は委託が始まり、紹介が入ってきて回復している。
担当別の対応と成約(紹介+賃貸)
| (紹介+賃貸) | 竹園様 | 片倉様 | その他 |
|---|
| 対応件数 | 56件 | 24件 | ― |
| 成約(成約率) | 10件(17.9%) | 4件(16.7%) | ― |
| アルトル取り分(円) | 1,166,230(55.2%) | 388,544(18.4%) | 557,200(26.4%) |
| 営業利益(円) | 503,290 | 205,888 | 322,880 |
数字の受け止め。
片倉様:決めるという点では、この数字で正しいと思う、ご自身の感覚ともすり合っている。難しいのは集客。
古谷野:会社としてのデータとしては分かりやすいが、プレイヤー個人の営業成績としては、集客元別などの粒度が足りない。
竹園様・片倉様:当面は打席に立つ数を増やす戦略で件数をこなしてきた。その結果、「この類いの案件はやめよう」という判断が最近決まってきた。
払い出し(1〜6月)。片倉様へ約24万円、竹園様へ約34万円。竹園様の分は、報酬ではなく、交際費や移動費などの必要経費が中心。売上の担当別の取り分は、上の表のとおり。
人材紹介の数字(9/22版)。成約9件。売上総額は約622万円、早期離職の返金(戻入)を引いた後で約419万円、アルトルの取り分は約119万円。免許を借りている現状では、取り分は戻入後の売上の約28%(3分の1弱)。自社で免許を取得して運営した場合の利益は大きく増える見込みで、取得の価値は十分にある、と確認した。賃貸は10件成約、取り分は約92万円。紹介と賃貸を合わせた取り分は約211万円、営業利益は約103万円。
予算戦略とシミュレーター
シミュレーターは、役員報酬の金額に応じて、必要な売上を計算するもの。お二人にも、実際に画面を触って確認してもらうよう案内した。
共通費(固定費)
42.7万円/月
委託40%・紹介30%・賃貸25%・制作5%で配分
損益分岐の稼働目安
委託4・紹介3・賃貸3
毎月、この件数を決めていく
目標
自己資本500万円
15か月・税引前で約661万円
利益の目標
1か月目 17.7万円
15か月目 86.9万円(毎月 約12.05%増)
前提。共通費42.7万円(月)を払うと、営業利益がちょうど0円。これを超えるには、毎月、委託4人・紹介3人・賃貸3人を決めていく必要がある。15か月で自己資本500万円(税引後)を残すプランは、頑張りが必要なペースになっている。竹園様の役員報酬は、予算上20万円で組んでいる。
| パターン | 1か月目 | 8か月目 | 15か月目 |
|---|
| 竹園様30万円・片倉様は役員報酬なし(フィーは現行の前提) | 約166.2万円 | 約202.2万円 | 約306.4万円 |
| 竹園様20万円+役員1人30万円 | 約158.6万円 | 約185.8万円 | 約264.2万円 |
| 竹園様20万円+役員1人20万円(1か月目は現状の約6.4倍) | 約144.1万円 | 約171.3万円 | 約231.5万円 |
読み方。表の金額は「毎月必要な売上」。バックオフィスの人数(0.5人刻み)も含めて計算している。役員報酬を払うパターンでは、片倉様のフィーは発生させない(フィー分を役員報酬に置き換える)前提。役員報酬を払わず、フィー方式のままとするパターンは、必要売上が高めに出る。
稼働の目安(役員1人30万円・竹園様20万円のパターン)。1か月目は、委託9人・紹介5件・賃貸6件ほどを毎月決める計算。15か月目には、委託14人・紹介8件・賃貸10件ほど。この件数は、過去データから出した平均の単価・利益で割ったもので、歩留まりの改善や集客の見直しで、必ずしもこの人数まで行かなくてもよい。
バックオフィス。バックオフィスの人員を入れる想定を、月25万円で試算している(候補の高橋様)。社会保険の手続きなどは自分たちでは難しい面があり、メンバー構成の変化も見据えると、バックオフィスは必要になりそう、という方向で話した。業務委託や外注という選択肢もある。
ストックとショット。委託や紹介の稼働が積み上がるほど、毎月の「単発(ショット)」の負担は軽くなる。ただし、委託は短期で稼ぐモデルではなく、継続して積み上げるモデル。積み上がった後は、自社で免許を取得できれば、取り分が大きく増える。
現実とのすり合わせ。シミュレーターは過去データからの試算で、現実とぶつかる点がある。歩留まり・集客・配分なども、考えた方がよい。予算の確実な数字は、戦略を決めてから出す。クリエイターへの外注費は入っているが、割合は小さい(約5%)。ここに投資したいなら、売上の上乗せが必要。
役員の役割と報酬の考え方
役員報酬の仮案(レイヤー)。執行役員(株を持たない)は0〜9万円、取締役(株を持つ)は10〜19万円、代表と同じレイヤーで20万円程度が、限度の目安。ここは、税理士にも相談する。その代わり、利益が乗った段階で、次の投資に使うか、自分たちに還元するかは、自分たちで決められる。15か月の期間を伸ばすか、短くして頑張るか、も自分たちで決められる。
代表に求められること(古谷野の説明)。経営責任と、関係先への最終責任。ビジョン・経営理念を全社員に浸透させること。資本政策や事業承継など事業判断の肝。不測の事態に備えること。業界内での専門性・実績・信用が会社の対外的な価値になるため、専門性を高め続けること。
取締役・執行役員に求められること。会社に対する善管注意義務・忠実義務。取締役は、意思決定とモニタリング。数字への責任(資金繰り・損益を俯瞰し、計画を立てて実行する)。下のメンバーの育成と横断的な統括。金融機関・取引先・株主との関係づくり。執行役員は、数値目標と中長期の経営計画を達成する戦略を立て、実行できること。
共同経営について。最初は仲が良くても、最後に揉めることがある。揉めないためには、どちらかが社長、どちらかが副社長、という上下の関係を決めておくことが望ましい。共同経営はお勧めしない、という整理。これを題材にしたワークも用意した。
片倉様のご提案。まず、自分の役員報酬は、500万円が貯まるまでなくてもよい。必要なのは、紹介の免許を取ること。リスクは自分が変動費の側で受けて、固定費を下げ、500万円まで待つ。固定費を抑える、という方向は堅実。そのパーセントが「PL上で出して問題ないライン」であれば、それが一番良い。
竹園様・古谷野の受け止め。
古谷野:シミュレーターは、役員報酬を払う場合は、フィーを0%として出している。フィー方式のプランを出すなら、現状のフィー率より抑える必要があり、別のところを抑えるか、やり方・取る数・単価を見直すことになる。3人で予算戦略を詰めていくのがよい。
竹園様:フィーを落として、会社にお金を残して免許を取るなら、将来の約束はしたい。免許取得後はいくらからスタートするか、いくらまで行けるか、を決めたい。竹園様ご自身も、どのみち20万円までしかもらえない。
もらい方の工夫。税理士に相談して、もらい方の工夫で手取りを増やせる可能性がある(例:お二人が自分名義の家を社宅にする、など)。そもそも20万円を払わなくてよい選択肢もあるかもしれない。竹園様の場合は事情があり、すぐには難しい面がある。いずれも税理士に確認する。
企業理念・ビジョン・バリュー(竹園様)
竹園様が作成された企業理念書の共有です。内容は、竹園様の読み上げと説明に基づいています(文言の最終確認は、理念書の原本で)。
理念。利他を通じた新しい価値の創出。作品や新しい価値を生み出して、世界に驚き・面白さ・感動を届ける。先に動いて、相手の想像を超えた手応えが生まれ、また声がかかる。選ばれることで、新しい挑戦の光が生まれ、与えられるものが増えていく。この循環が、竹園様のやりたいことであり、実現したい姿。
ビジョン。メインはクリエイティブ、サブとして人材紹介。IP(知的財産)の創出も視野に入れる。
会社は「港」、人は「船」。会社は港で、人が船。竹園様ご自身の船は、作品づくりや、舞台に出ること、そして実家に何かあったときにすぐ帰れること。そのための帰ってこられる場所を作りたくて、この会社を作っている。片倉様が「ゲームチームを作りたい」なら、その船を一緒に作りたい。古谷野が「収入の柱を作りたい」なら、柱をたくさん作れる事業を作る。それぞれが目的地の島に行って、果たして、帰ってこられる港でありたい。クリエイターも従業員も、帰る場所と後ろ盾があるから、冒険できる・挑戦できる、という会社にしたい。
ミッション。新しい価値を創ること。「作り手発注社会」を実現する。クリエイターの皆さん、クライアントの皆さん、そして社会に対して、誠実であること。
やらないこと。従業員に過度な負荷をかけること。社会に不誠実なこと。詐欺的な商品を作って、お金儲けだけをすること。既存の事業を前に進めるだけのアポイント獲得のような仕事は、新しい価値ではなく、再現性や将来性もないため、基本的に行わない。新しい価値を作れることを、今からやっていく。
バリュー(行動指針)。挑戦し続ける/挑戦を後押しする/挑戦を受け止める/問題の解決から逃げず向き合い、失敗から学ぶ/(良い)カルチャーは自分たちの手で作り上げる/子どもたちが憧れる大人であり続ける/港がこれからも揺らがないように、事業の土台を育て続ける。竹園様は「5つ」とお話しになったが、読み上げられた項目は7つ。挑戦を後押しする組織のためには、資本(お金)が必要で、港の土台を育て続ける、が最後の項目につながる。
事業構造。コア事業は、デジタルコンテンツの開発とクリエイターの運営。サブ事業は、営業代行・営業コンサルティング・人材紹介・不動産、そしてM&A。M&Aは、会社を買って売るだけでなく、税理士候補の方が行っている、会社の収益を改善してから売る形(社員が残り、社長が売りたい会社を立て直して売る)を想定している。収入の柱をどんどん増やしていくのは、ありだと考えている。
「挑戦を受け止める」とは。メンバーが「やりたい」と言ったときに、「では、君が払ってね」と返すのは、受け止めたことにならない。やりたいことを、みんなで解決していく。一番伝えたいのは、港にしていくので、港づくりを一緒にやっていってほしい、ということ。
裏理念と採用の基準(片倉様のご提案)
ご提案の内容。理念・ミッション・バリューは、非常に良いと思う。一方で、どんなに良い会社でも、表に出すのは綺麗なことで、現実はそれだけではない。自分たちの内側では、「現実はこれぐらい厳しい」という目線を揃えておきたい。表の理念を、社外にそのまま出す必要はないが、役員だけでも、過酷な現実を共有しておいた方がよい(片倉様のお考え:会社は、雇っている社員を守ることと、利益の最大化が土台である)。
現実面の例(やり取りの中で)。「港を作る」と言って来る人の中には、手伝いはせず、参加したら何かもらえる、と思っている人もいる。その場合は「それなら、お金を払ってください」という話になる。ビジネスは結局シビアなもので、スクールでお金をいただいているのも、その入り口の1つ。きれいごとだけでは進めない。「ここまで来たら、これはやめる」というラインを、裏で持っておく。
古谷野の整理。竹園様が描いたのは、ゴール地点(Where/What)。片倉様のお話は、どうやってそこまで行くか(How)の部分。裏理念は、2人できちんと合わせて持っておき、片倉様が、下の役員や責任者に教育するときの軸にもなる。
採用の基準になる。理想的な理念だけだと、誰でも入れる状態になり、成果を出さずに利益だけを得ようとする人が混ざるリスクがある。採用は、どれだけ気をつけても、事業が大きくなるほど、そうした人が入る可能性が高まる。裏理念があれば、「入っていい人」「船乗りだな」という人が見分けやすくなる。オセロのように、自分たちをどれだけ固められているか、が大切。
竹園様の受け止め。裏理念という視点は、竹園様ご自身にはなかった発想で、とてもありがたい提案として受け止めた。形の整え方(どう落とし込むか)は、これから一緒に考える。
リーダー像について。歴史上の人物(三国志の人物)を例に、人望で人を引きつける面と、制度・規律で組織を守る面は、どちらも組織に必要で、お互いに補い合えるとよい、という話になった。
役割・将来像と、組織の備え
片倉様のお考え。ご自身が得意なのは、自分で稼ぐことよりも、人や仕組みを集めること、お金になる仕組みを作ること。最初は、稼ぐための元手(資本)を作りたい。その資本を、自分や竹園様、会社で作ることが、今、一緒にやる理由。自分一人の事業ではなく、組織ごとを動かしたい。長期のゴールは、クリエイターのIPで大きく当てること。IPが当たれば、映画化やアニメ化の話が来る。その場合、ご自身のポジションには特にこだわりはなく、また別のことに投資できる。将来、自分が抜けることになった場合は、事前に話をする(今は全くない)。
竹園様のお考え。歳を重ねても挑戦はやめないので、港を作っているのはそのため。この会社は、ずっと続ける。バイアウト(売却)をしたくなったら、新しい会社を作って、そちらを育てて売る。将来、分社化することはあり得る(紹介や不動産、クリエイティブ領域、スクールなど)。たとえば、事業を任せられる人を社長にして、自分は役員として入る、という形。この会社自体は、後ろ盾として残したい。
古谷野の問いかけ。今は目的が一致しているから成立しているが、お金ができたり、ライフステージが変わったとき、「やっぱり違う」となると、お互いに困ることがある。未来のことは約束できないが、役員をやる・会社を立ち上げるのは、責任が伴うこと。話し合えるベースを、あらかじめ作っておくことが大切。
大きな会社の例から。大きな会社でも、世代交代や組織の維持のために、ナンバー2・ナンバー3が入れ替わることがある、という例が話題になった。事実関係はその場で調べきれていないため、あくまで参考の話。大切なのは、本人の意思と条件を、事前にきちんと話し合っておくこと。
株式と権限。株式は、竹園様が約9割、片倉様が約1割を持つ想定。代表が株式の大半を持つ体制では、権限の所在と、万一の離脱・独立への備えが論点になる。契約で縛るだけでなく、お互いの価値を言葉にしておくことと、権限・責任の設計を明確にしておくことが、いちばん大事。竹園様は、そのようなことをする方ではないと思う、という声もあった。
分社化・グループ化。揉めやすい状態を避けるために、将来的に会社を分け、ホールディングスの下に子会社を置き、そこの社長に任せる、という形も選択肢。「会長が口を出して現場が疲弊する」ことも起きやすいため、責任と権限の設計をしっかりしておく。
役員報酬の水準・税務。役員報酬の相場や、会社に利益を残した場合と、役員報酬として払い出した場合の違い、退任時の退職金の考え方、売却時の税金などが話題になった。いずれも、記憶や伝聞に基づく話で、確認はしていない。実際の適用は、税理士に確認する。
役員の契約事例。ナンバー1・ナンバー2が、どのような契約・役割で関わっているか、他社の事例を見てみたい、というご希望があった。税理士候補に聞くと出てくる可能性がある。きれいな事例が中心になりがち、という点は踏まえて見る。
ワーク「双葉食堂」(決定権と責任の明確化)
料理人が多すぎるとスープが台無しになる(Too many cooks spoil the broth)というたとえを使ったケーススタディ。台本(ファシリテーション用)の章立てに沿って、物語・問い・出た意見を整理しました。意見は、録音で話者を区別できないため、各章では個人名を付けていません(ファシリテーターのまとめは古谷野。締めのみ、発言者が分かる範囲で名前を付けています)。
導入。代表と役員の間に上下関係がなく、決定権や責任の所在が曖昧だったために立ち行かなくなった食堂の物語。祥佑(大将)と大斗(相方)は幼なじみで、出資も口出しも五分五分。最初に結末(バッドエンド)を伝え、そこに至る「組織崩壊ポイント」を、最初から見つけていく形で進めた。「危ういぞ」と思ったら、遠慮なく声に出す。代表の立場・役員の立場のどちらに立って考えてもよい。誰かの正解を探すのではなく、問いを立てて話すワーク、という前提を確認した。
序章・ウォームアップ:大将と相方
物語。商店街で評判の食堂「双葉食堂」を、祥佑と大斗が始める。出資も味の決め事も五分五分。厨房では祥佑が「大将」、大斗が「相方」と呼ばれるが、本当の決め手をどちらが持っているのか、店の者にも本人たちにも曖昧だった。
問い。「大将」と「相方」という呼び名のまま二人で店を回すことに、どんな危うさを感じるか。二人の間で、まだ決まっていないことは何か。
出た意見。
・「大将」のほうが社長っぽい。「相方」は下っぽく聞こえる。
・自分がメンバーだったら、どちらについていけばよいのか分からない。どちらの言うことも正しい、と思ってしまう。
・仲がいい、対等だ、というのは心地よい。ただ、その前提だけでは「誰が何を決めるのか」が決まらない。
ファシリテーターのまとめ(古谷野)。「仲がいいから」「対等だから」という前提だけでは、いざという時に誰が決めるのかが決まっていない。
第二章:祭りの特別メニュー(崩壊ポイント① 意思決定の停滞)
物語。地元の祭りに屋台を出すことになり、「いつもの出汁に、祭り向けの一手間を」と頼まれる。祥佑は「いつもの味を崩すべきでない」、大斗は「思い切って新しい出汁を」と主張し、何日も話し合いが続く。見習いの健太は、どちらの出汁で仕込むのか、何度も二人に聞きに行く。結局、仕込みの期限が来て、中途半端な準備のまま当日を迎える。
問い。この「決められなさ」は、どこから来ていたのか。二人の関係のどこに、構造的な問題があったか。もし違う形だったら、何があれば良かったか。
出た意見。
・商店街の側から新しいことを頼まれた時点で、断るという選択肢もあった。「うちは決まった出汁で出したい」と言うのか、受けるなら新しい出汁で出すのか。自分なら「両方出す」と言う。
・問題の根本は決定権。外から革新的な提案が来た時に、どう扱うかを決める権利が、誰にあるのか。
・対等だと、意見が割れた時に最終的に決める仕組みがない。多数決を取っても、決定自体が止まる。
・間に挟まれた健太が、一番かわいそう。
・あったら良かったもの:「どちらかが決める」こと。決定権と責任。「意見が割れたら最終的には大将が決める」という取り決めを、最初から持っておく。誰が健太に指示を出すのかを決めておく。報告・指示のラインを決めておく。
ファシリテーターのまとめ(古谷野)。最終的に決める人が決まっていれば、健太は板挟みにならず、仕込みも間に合ったかもしれない。
第三章:出汁の取り直しの夜(崩壊ポイント② 貢献度と報酬の不一致)
物語。仕入れた昆布と鰹節に不具合が見つかり、大斗が閉店後から朝まで、一人で出汁を取り直す。その間、祥佑は常連客に誘われて飲みに出ていて、仕上がったことを知ったのは翌朝だった。それでも取り分は五分五分のまま。ホール担当の美咲が「相方があれだけ頑張ったのに、取り分が変わらないのはおかしい」と知り、店の者の間でささやかれる。大斗自身も、口には出さないが、胸の内に小さなしこりを抱える。
問い。この不公平感は、なぜ生まれたのか。「出資も取り分も、ずっと五分五分」という仕組みの、どこに落とし穴があったか。
出た意見。
・こういう話は、必ず漏れる。店の者同士(健太と美咲)が話しているうちに、いろいろな情報が飛び交う。
・出資も取り分も「ずっと」五分五分、と固定してしまったことが落とし穴。
・「対等」「公平」「仲がいい」から始まっても、お互いの価値を見出せなくなった時に、その価値を説明できなくなったら終わりだと思う。
・この一場面だけを切り取れば、五分五分で良いと思う。ただ、その差が続いて、会社への貢献の差になっていくなら、見直すべき。全く同じことをしているのなら不要だが、役割が違うなら、取り分も見直す必要がある。
・責任の持ち方で分けて考える。例えば、ホールの責任は祥佑、厨房の責任は大斗、のように。祥佑が連絡がつかなかったのは、連絡不足なのか、そもそも連絡していないのか。常連のところで客を連れてくる動きだった可能性もあるので、一概には言えない。五分五分でやるなら、責任も五分五分で分けておくべき。それが実質無理なら、五分五分でやらない方がよい。
・責任と権限を、最初から分けておくことが大事。役割分担の中で、役割を果たしているかを見る。五分五分は難しい。実際の事業が動き出すと、働きやリスクの差を反映できなくなる。
・黙っていたことも、言い出さなかったことも、不信感と説明不足が重なってしまう。
・最初から五分五分でやって、見直す機会を持たず、役割や貢献に応じて仕組みを変えていかないと、「対等」は耳心地が良いだけで、いつか不公平感が出てくる。設計が大事。
・意思とずれた時に、ずれたことが分かるから、どう修正していくかを話せる。それを小さいうちに話す必要がある。
・見えているものだけが全てではない。事実は「ダッシュで作った人」と「酒を飲んでいた人」だが、そこにどんな解釈をのせるかは、それぞれ個人の話。下手な解釈をのせず、きちんと話し合えるようにしておく。
・話し合いが膠着した時に、最後に決めるのは誰か。そこが決まっていないことが、「社長・副社長」で進めなければいけない理由の1つでもある。
ファシリテーターのまとめ(古谷野)。役割や貢献に応じて報酬を見直す仕組みがなければ、「対等」はいつか「不公平」に姿を変えてしまう。
第四章:拡大か、一軒を極めるか(崩壊ポイント③ 経営方針のズレ)
物語。繁盛してきた頃、祥佑は「評判を活かして店舗を増やすべき」(拡大路線)、大斗は「手作りの味を守るため、この一軒を極めるべき」(守りの路線)と、意見が割れる。どちらの言い分にも一理あり、店の者の前で言い争う場面も増え、板前の龍たち若い衆は、大将と相方のどちらの顔色を伺えばよいのか分からなくなる。
問い。この対立は、なぜ長引いたのか。もし「最終的にどちらかが決める」仕組みがあったら、何が変わっていたか。
出た意見。
・フランチャイズか1店舗かで揉めている時点で、問題があると思う。そもそも、経営方針として、どちらの動きをするのかを決めなければならない。それが決まっていない状態でここまで来たこと自体が問題。
・五分五分で、決定権がないから、そうなる。五分五分でやるとしても、「ここはあなたの決定権、ここはあなたの決定権」と、部分的に決定権を割り振るしかない。
・事業の例として、事業ごとに決定権を分ける考え方が出た(例:賃貸は誰、人材は誰)。決定権が独立していれば、従うしかない。ただし、下で働く社員は、部門が分かれていくと、辛い思いをするだろう。
・五分五分だと、大斗はフランチャイズに「うん」と言えない。祥佑の意見なら、「あなたは1店舗を守って、自分でフランチャイズをやる」と提案するかもしれない。でも、フランチャイズをやる方が大変で、割に合わないと思って、言えない。大斗の目線では、「自分は雇われ社長ではないし、そもそもお前がやると言ったのだろう」となる。
・フランチャイズの利益をどうするか、という話も出てくる。全部を五分五分にせず、フランチャイズは7:3にする、味の指導だけなら3を渡す、のような決め事ができるはず。五分五分に縛られると、それができない。
ファシリテーターのまとめ(古谷野)。方針が割れること自体は自然なこと。問題は、割れた時に「最後は誰が決めるか」が決まっていなかったこと。
第五章:食通の記者の取材(崩壊ポイント④ 積み重ねの末の有事)
物語。有名な食通誌の記者が、「隠れた名店」として取材に来る。出汁の一杯に、店の評判がかかっている。祥佑が「塩が足りない」と鍋に塩を足し、ほぼ同時に大斗が「これで十分」と湯を足す。健太はどちらに従えばよいか分からず、出汁は味の芯を失った中途半端な一杯になり、二人は「お前が余計な手を出した」と責め合い、幼なじみの仲もこじれる。
問い。この結末に至るまで、どんな問題が積み重なっていたか。「代表」の視点、「役員」の視点、それぞれから見て、何が足りなかったか。
出た意見。
・間に挟まった健太の気持ちが、一番よく分かる。健太は、よく続いている。(後ろに人もいる、ナンバー3でもある、という声も)
・代表の視点・役員の視点それぞれで、何が足りなかったかは、各自が胸の中に持っておいてほしい(古谷野)。
ファシリテーターのまとめ(古谷野)。決断の停滞、不公平感、方針のズレが積み重なり、有事の場面で指示が割れて、現場が動けなくなった。日本のことわざでは「船頭多くして船山に登る」。対等であることの心地よさは確かにあるが、時間の経過や出来事によって変わり、取り返しのつかない事態になることもある。
締め:物語から、自分たちへ
問い。自分たちの体制に重なるところはあるか。あるとしたら、どこか。
出た意見。
・【竹園様】今は五分五分ではない。今後、部門を任せた時に、自分が口を挟みすぎることがリスクになる。任せた後の関わり方(口を出しすぎない、結果が出ない時にどう伝えるか)を決めておく必要がある。
・【片倉様】同じ意見。お互いの価値を、常に言葉にできるようにしておくとよい。今も、お互いの価値は明確で、揉めてはいない。
・【片倉様】現状は、緩いところがあるかもしれない。ただ、そもそも五分五分ではなく、今でも「最終決定はあなた」と言える関係。
・遠慮なく「それはやめた方がいい」「いいんじゃないですか」「お金を払いすぎでは」と言い合えるのは、お互いに、ビジネスとしての価値を感じているから。その価値を感じなくなった時点で、難しくなる。価値を感じ続けること、今のままより成長させていくことが大事。
古谷野より。
・代表としてどんな意識を持つか。竹園様のことだけではなく、片倉様が代表だったらどうするか。逆に、決定を尊重して現場・実行を担う側として考えること。お互いが、今の椅子から反対側の椅子に座った時にどう感じるか、を考え続けてほしい。
・二人で確認していく「望ましい上下関係」:①誰が何を最終的に決めるか。②役員の意見を、どのタイミングで、どのように聞くか。③意見が割れた時に、最終的にどちらの判断を優先するか。
・先回りして言うと、最後に決めるのは代表。部門ができて任せる時には、どう任せるかの役割を決めておく。五分五分であっても、働いていない瞬間があってもよいが、それはきちんと相手に伝える。相手の価値を言葉にして、自分の中に持っておく。
定例でのフィードバック。
・いろいろな企業の話を聞く中で、代表・役員・事業責任者の全員に、同じ質問をしている。「リスペクトしているところ」と「直してほしいところ」を、すべて教えてもらうと、どういう経営をしているかが一発で分かる。
・お互いにどんな話し合いをして、どんな距離感か。ミッション・ビジョン・バリューや関わり方の認識の合わせ方によって、良いところも悪いところも見える。それを、どう強みに生かすかの会話が、きちんとできている。これを定例でやるとよい。
・「今まで、意見が割れたことはありますか」:あると思う。定例に出るかどうか、コミュニケーションの取り方、など。判断は委ねてくれるので、大きく割れたことはなく、些細なこと。些細なことが、どんどん大きくなる。
ルールの考え方(まとめ)。
・価値観が変わるくらい時間を重ねる場合は、ルールを決めて動く。
・ルールを決める時にきちんと参加しなかったら、後出しはしない。「最初からうまくいかないと分かっていた」と後から言うのもなし。
・本番は練習であり、練習は本番。日々の小さな意思決定が、重要な意思決定の練習になる。重要な意思決定が来た時は、日々の練習の積み重ねをやるだけ。ワークの内容は、リンクからも見返せる。
次回以降に行う部分。タイムアップのため、台本にある次の部分は、次回以降に行う。「上下関係の正体(対等であることと、責任の所在は別の話)」「もう一つの崩壊パターン(責任を引き受けない役員/聞かずに決める代表)」、代表・役員それぞれの「宣言」を個別に聞く場面、宣言の見直しと締めの読み上げ。